2012年03月21日

事前調査の不徹底による不適切な建築物解体事例

事前調査の不徹底による不適切な建築物解体事例


  石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)第3条では、事業者は、建築物、工作物又は船舶の解体、破砕等の作業(改修の作業を含む)を行うときは、あらかじめ、石綿及び石綿を0.1%を超えて含有するもの(以下「石綿等」という。)の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、その結果を記録しておくこと、及び当該調査結果の概要等を掲示することを定めている。

  しかしながら、事前調査を行わなかったり一部分のみを調査して網羅的な調査を怠ったりしたために、必要な届出を行わずに解体が行われた事例が発生している。【下記2件の災害事例参照。事例は厚生労働省化学物質対策課にて把握されたものである。】



事例1

1 発生日時 平成23年11月

2 作業の種類 石綿含有保温材が使われた建築物の改修工事

3 災害発生状況

  石綿含有の認識がないまま保温材の除去作業を実施。同じ時期に同じ施工者により建てられた同型の建物からは、作業を行った箇所と同一の箇所(部材)に石綿が使われていることが判明した。

4 原因

  不十分な事前調査の結果に基づいて工事を行ったこと

5 対策

 1) 事前調査を適切に実施し、結果を記録すること。
 2) 発注者は、石綿等の使用状況等を適切に伝達すること。



事例2

1 発生日時 平成24年1月

2 作業の種類 吹付け石綿が使われた建築物の解体工事

3 災害発生状況

  3階建ての建物の解体工事で、1階部分の吹付け材を分析したのみで建物全体に石綿無しと判断したが、廃材から石綿が見つかり、他の階では石綿が使われていたことがわかった。

4 原因

  不十分な試料採取に基づく分析。

5 対策

 1) 設計図書や改修記録から、同一施工の範囲をあらかじめ確認すること。
 2) 必要な数の試料採取を行うこと。



再発防止対策



1 事前調査と結果の記録、掲示の徹底

1)  事前調査は、的確かつ網羅的に行うことができるよう、一定の知識及び技能を有した者が行うことが望ましいこと。また、必要な調査箇所の見落としを防止する観点から、写真や図面により調査した箇所を調査結果に記録することが望ましいこと。また、調査終了年月日、調査方法及び結果の概要については、作業場に掲示する必要があること。(別紙2=省略)

2)  目視及び設計図書等による調査により、石綿等の使用がないことが明らかになった場合でも、その旨に加え調査方法や調査場所等を記録し、かつ掲示するよう徹底すること。

3)  内壁、天井、床、屋根、煙突等に使用されている成形板その他の建材等について、石綿の使用の有無を確認するには、国土交通省・経済産業省の石綿含有建材データベースhttp://www.asbestos-database.jp/、 社団法人日本石綿協会、建材メーカーのホームページを活用する方法があること。


2 分析による調査

1)  建材等が吹き付けられている場合には、石綿則第3条第2項に基づき、石綿等の使用がないことが明らかである場合を除き、分析による調査を行うこと。

2)  石綿等の使用の有無の分析による調査に当たって、試料の採取が不適切であると、含有する石綿が適正に計測されないおそれがある。特に、建築物等に後年の補修又は増改築がなされている場合や、吹付けの色が一部異なるなど複数回の吹付けが疑われる場合には、吹き付けされた場所、時期ごとに試料を採取してそれぞれ石綿の有無を判断するよう留意すること。ただし、複数の区画又は階にわたり吹付けがなされた建築物等であっても、設計図書等により同一かつ均一の施工であることが確認された場合にあっては、各区画又は階における試料の採取は必要ないこと。
3)  建材等の採取及び分析に当たっては、必要に応じて、次のア、イ又はウを参照すること。

 ア 「石綿含有建材の石綿含有率測定に係る講習会テキスト」(厚生労働省)
     http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/mortar/index.html

 イ 「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル」(環境省)
     http://www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/manual_td/index.html

 ウ 「新版 建築物等の解体等工事における石綿粉じんへのばく露防止マニュアル」(建設業労働災害防止協会)

4)  石綿等の使用の有無の分析を分析機関等に行わせる場合には、社団法人日本作業環境測定協会が行う石綿分析技術の評価事業において、Aランク又はBランク認定分析技術者の資格を有する者に分析を行わせることが望ましいこと。(ホームページhttp://www.jawe.or.jp/jigyou/seido-s/ishiwata/#agencyに掲載。)


3 呼吸用保護具の使用

1)  建築物等の解体等の作業においては、作業に伴って粉じんが発生するおそれがあることから、事前調査の結果として石綿等の使用がないことが確認された場合であっても、防じんマスク等の呼吸用保護具を使用すること。

2)  石綿則第14条に基づき隔離等を行った作業場所において、吹き付けられた石綿等を除去する作業に労働者を従事させるときは、電動ファン付き呼吸用保護具、送気マスク等を使用させなければならないこと。


(以上の再発防止対策は、平成24年2月13日基安化発0213第1号労働基準局安全衛生部化学物質対策課長から都道府県労働局労働基準部長あて「建築物等の解体等の作業における事前調査の徹底等について」に基づくもの。)



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塩酸貯蔵タンク内に労働者が転落し死亡するという災害(船橋事故ほか類似災害3件)と再発防止対策

塩酸貯蔵タンク内に労働者が転落し死亡するという災害(船橋事故ほか類似災害3件)と再発防止対策

事例1
船橋塩酸タンク事故2011.8.23共同通信.jpg

1 発生日時 平成23年8月24日(水)午前9時30分頃

2 発生場所 千葉県船橋市

3 被災状況 死亡2名

4 発生状況の概要

災害発生事業場では、鋼板の錆を落とすための洗浄液として使用する塩酸の貯蔵タンクを屋外に設置しており、そのうちの2基のタンク(地上5mの架空タンク、横置型)を地上に移設する工事を行っていた。

当該工事において、2基のタンクと別の塩酸タンクX(縦置型。高さ約3.4m、直径2.0m。FRP製)とを接続する配管を撤去するにあたり、当該配管をどの位置で切断できるか確認しておくよう、元方事業者の作業責任者が下請事業者の労働者Aに指示した。
  
労働者Aは同タンク附属のはしごを使用してタンク上部に昇り、配管接続部へ移動しようとしたところ、タンク上部が割れ、タンク内に墜落した。同僚の労働者Bがこれを救助しようと塩酸タンクXの上部に乗ったところ労働者Bも墜落した。他の労働者が救助を要請するとともにタンクから塩酸を抜く等により2時間半後に救出したが、2名とも死亡していたもの。

塩酸タンクX内にあった塩酸は濃度35%、深さ約2mであった。



過去の同種災害の例

事例2

1 発生年月 平成14年4月

2 発生場所 東京都北区

3 被災状況 死亡1名、薬傷5名

4 災害発生状況

塩酸タンク(高さ3.2m、直径2m、FRP製)の更新作業において、塩酸の引抜きのため上部開口部に耐酸ローリーのホースを設置する準備で、開口部ねじを開けようとして昇り、梯子がぐらついたため 、タンク上部に移った時、被災者自身の体重でFRPが破損し、落下した。

タンク内部には1,050Lの35%塩酸が入っており、全身化学熱傷で死亡した。また、転落した被災者を救助しようとタンクから運び出し、全身に塩酸を浴びた被災者の体を支えた者も、作業服の上から塩酸がしみ込むなどして薬傷を負った。


事例3

1 発生年月 平成18年5月

2 発生場所 宮崎県延岡市

3 被災状況 死亡1名

4 災害発生状況

排水中和設備タンクヤードに設置された塩酸タンク等の周辺に仮設した足場上で当日の電線管敷設工事を終了したので、足場上から降りる際、近くの塩酸タンクに附属の梯子があるのに気付き、そこから降りようとして足場からタンクの手すりにのぼり、FRP製の塩酸タンクの頂部に乗り移った際、タンク頂部が破損し、タンク内部に落下し、35%塩酸により薬傷した。(被災者死亡のため推定)


事例4

1 発生年月 平成18年8月

2 発生場所 愛媛県伊予市

3 被災状況 死亡1名

4 災害発生状況

工場の操業停止に伴い、FRP製タンク(高さ約3m、直径約2.5m)に上がり、塩酸を除去する作業のため、天板状のマンホールのボルトの抜き取り作業中に、タンク上部の一部(天板)が抜け転落。タンクのなかに残っていた塩酸(35%。深さ約1m)で全身やけどとなり死亡したもの。





再発防止対策



1  塩酸等金属腐食性の液体の貯蔵に主に使われている強化プラスチック(FRP)製のタンクは耐腐食性に優れているものの、長期にわたり塩化水素等の腐食性のガスにさらされること及び屋外におかれている場合には紫外線にさらされること等から、経年劣化によりプラスチックとガラス繊維の剥離等により強度が低下することについて、当該タンクの管理権限を有する事業者が十分に認識し、タンクのメーカーから適正な検査方法についての必要な情報を入手するなどして、必要な点検、作業者への教育、請負人への情報提供等の実施を徹底すること。

2  経年劣化によりFRPの強度が低下することから、元方事業者及び請負人は、労働者等がFRP製タンクの天板等に乗ることのないよう、高所作業においては、適切な足場(作業床)を設置しなければ作業を行ってはならないことを徹底すること。

3  設備の保守点検・改修作業等を発注する者(以下「発注者」という。)は、作業に伴う危険性に係る情報をあらかじめ元方事業者に提供するとともに、当該危険性を踏まえた適切な作業が行われるよう指導すること。

4  発注者は、元方事業者が統括管理体制を確立し、各請負人の作業分担を明確化するよう指導すること。特に、各請負人が行う作業間の連絡調整等必要な措置を確実に実施させ、それぞれの作業で有害物による危険が生じない措置を元方事業者に講じさせること。

5  塩酸等を貯蔵する特定化学設備を所有等し、その管理権限を有する事業者は、法定の定期自主検査を確実に実施するとともに、定期に点検を行うことにより、設備の経年劣化を早期に発見するよう努めること。

6  作業中に予定されていない作業の必要が認められた際に、当該作業を行う請負人の判断に任せることなく、元方事業者との間において作業方法の検討を行う等の対応を予め取り決めておくこと。

7  関係事業者は災害発生時等異常な事態が発生した場合の救護体制の確立、訓練を行うこと。特に、二次災害の防止の観点を含め教育・指導を行うこと。


(以上の再発防止対策は、平成24年1月11日基安発0111第2号厚生労働省労働基準局安全衛生部長から都道府県労働局長あて「塩酸等貯蔵タンクの保守点検・改修工事における労働災害防止対策の徹底について」に基づくもの。)


(注)
 特定化学物質である塩酸を製造し、又は取り扱う設備であって移動式以外の物は特定化学設備に該当するが、特定化学設備の改造、修理等の作業は、小規模であるもの等一部の場合を除き、当該特定化学設備を所有等し、その管理権限を有する事業者が他の事業者に発注して行われることが多く、本件災害もこれに当たるものである。


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