2015年04月29日

思い込みで閉鎖前の線路に工事用運搬機を進入させ、後続列車が衝突脱線した事故

京浜東北線列車脱線事故(平成26年2月23日発生)鉄道事故調査報告書
事故の概要
1.事業者名:東日本旅客鉄道株式会社
2.事故種類:列車脱線事故
3.発生日時:平成26年2月23日(日) 1時11分ごろ(天気:晴れ)
4.発生場所:東海道線(京浜東北線) 川崎駅構内
5.列車:桜木町駅発蒲田駅行き 回第2402A列車10両編成
6.死傷者:乗務員軽傷2名(運転士及び便乗車掌)

7.事故の概要

 列車の運転士は、通過駅である川崎駅に進入し、速度約65km/hで惰行運転中、前方の線路上に工事用軌陸型運搬機を認めたため、直ちに気笛吹鳴と同時に非常ブレーキを使用したが間に合わず、列車は同運搬機と衝突した。
 列車は、1両目が左側に横転した状態で、2両目が左側に傾いた状態で全軸脱線していた。
 列車には、乗務員2名が乗務しており、両名が負傷した。なお、列車は回送列車であったことから、旅客は乗車していなかった。
26.2.23川崎駅脱線事故.JPG
(↑ 列車が前方工事用軌陸車に衝突し脱線した)(事故調査委員会報告書掲載写真より)

工事の概要
 A社及びB社の共同企業体’が、事故当夜、同社から請け負った東海道線及び京浜東北線のホーム改良工事等を川崎駅構内で行っていた。作業内容は、線路閉鎖工事として、土木工事と建築工事を72名の作業体制で、軌陸車10台(本件軌陸車を含む)を東海道線(上下)、京浜東北線(北行、南行)に載線させて作業を行うことになっていた。

原因
 本事故は、線路閉鎖前の京浜東北線(北行)の線路内に工事用軌陸型運搬機が進入したことについては、工事用通路において工事用重機械等の誘導を担当していた重機械安全指揮者が同運搬機の誘導を行っていない状況で、同運搬機の運転者が、同安全指揮者から途中の地点までの移動の指示を受けた際に、京浜東北線(北行)の線路内まで移動できると思い込み、同運搬機を進入させたことによるものと考えられる。

再発防止策
 指揮命令系統を明確化し、指示やそれに対する作業実施が適切に励行されているかを再確認。作業現場における危険の認識、安全行動を身に付けさせることも必要。諸規程類の見直し、確実な作業に繋がるような教育訓練の実施が必要である。
 また、特に、線路閉鎖前の線路に工事従事者等を進入させないための確実な方法や万一立ち入った際の事故回避措置について検討して、その方法を定め、実施することが望ましい。


 [編注、コメント]

 事故調査委員会報告書の再発防止対策末尾に言及されている「線路閉鎖前の線路に工事従事者等を進入させないための確実な方法や万一立ち入った際の事故回避措置について検討」こそ重要になるが、報告書が対策の具体的な方法に言及していないということは、かなり、困難を伴う対策ということかも知れないのだが、、、果たして?
 
 本件事故の事故調査報告書・説明資料は以下のURLから参照できる。
 http://www.mlit.go.jp/jtsb/railway/p-pdf/RA2015-2-2-p.pdf


労務安全情報センター
http://labor.tank.jp
labor100-75.jpg



posted by labor at 18:14| Comment(0) | 個別災害事例

2014年02月01日

「パロマ湯沸かし器事故」で消費者事故調最終報告書(2014.1.24)

[パロマ湯沸かし器事故の概要]

(発生状況)

 平成17(2005)年11月27日(日)、東京都内の3階建て住宅において、風呂に給湯するためにガスが湯沸器を使用したところ、不完全燃焼による一酸化炭素発生した。
 翌28日(月)、居住者であるA氏(18歳、男性)の死亡が確認され、また、その兄であるB氏(24歳、男性)も重症を負った。
 
 当該ガス湯沸器の電源プラグは、普段使用していた東側洋室の埋め込みコンセントに接続した延長コードのコンセントから抜けていた。
 正常であれば安全装置によって点火・燃焼しないはずであったが、排気ファンが回転しない状態でもガスが燃焼するよう改造されていたために一酸化炭素が発生したものであった。

(原因)

 湯沸かし器の修理時に安全装置が不正改造された。不完全燃焼でCOが発生。
パロマ事故見取り図.JPG
パロマ湯沸かし器事故ー消費者事故調最終報告書(2013.1.24付け)

http://www.caa.go.jp/csic/action/pdf/140124_gaiyo.pdf (概要)
http://www.caa.go.jp/csic/action/pdf/140124_honbun.pdf (本文)

 最終報告書まえがきから

 本評価書は、消費者安全法第24 条第1項に基づき、消費者安全調査委員会により、生命身体に係る消費者被害の発生・拡大防止や被害の軽減を図るため事故の発生原因や被害の原因を究明することを目的に、経済産業省が取りまとめた「製品安全対策に係る総点検結果とりまとめ〜パロマ工業株式会社製ガス瞬間湯沸器による一酸化炭素中毒事故への対応を踏まえて〜」とその後の状況について消費者安全の視点から検証したものである。
 なお、消費者安全調査委員会による調査又は評価は、事故の責任を問うために行うものではない。
 消費者安全調査委員会
 委員長 畑村洋太郎


[編注、コメント]

 パロマ工業製ガス湯沸かし器によるCO中毒事故は1985年以降、28件発生し21人が死亡した。
 今回の最終報告書は、消費者安全調査委員会の発足後、はじめてとなる。調査開始から1年3月、事故調としての独自調査は行われていない。
 本件事故については、刑事事件、民事損害賠償の裁判も既に確定している。最終報告書は、今後に備えて、事故を様々な角度からを整理している点は評価できようが、一方、「インパクトに欠ける」感もぬぐえない。

ー参考ー
 (刑事事件)
 東京地検が07年12月、パロマの元社長と元品質管理部長を業務上過失致死傷罪で在宅起訴。東京地裁は10年5月、「パロマ側が機器の点検・回収という安全対策を講じていれば、事故は防げた」として、2人に執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。2人は控訴せず一審判決が確定した。

(民事損害賠償事件)
 東京地裁判決は「事故を予想できた」としてパロマの過失を認め、パロマと修理業者に計約1億2千万円の支払いを命じた。



労務安全情報センター
http://labor.tank.jp
labor100-75.jpg





posted by labor at 23:36| Comment(0) | 個別災害事例

2013年04月01日

1,2-ジクロロプロパン(別名 二塩化プロピレン)への長期間・高濃度ばく露による「胆管がん」の発症

1,2-ジクロロプロパン(別名 二塩化プロピレン)への長期間・高濃度ばく露による「胆管がん」の発症

印刷業〜校正印刷の業務に従事した労働者16人に胆管がんが発生
原因は、洗浄又は払拭の業務等において1,2-ジクロロプロパン(別名 二塩化プロピレン)に長期間・高濃度ばく露したことによるものと推定されている。



平成25年3月14日、「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」報告書が公表された。
(参考)同報告書の要点は、以下のとおりです。

 厚生労働省では、平成24年3月に、大阪府の印刷事業場で、化学物質の使用により胆管がんを発症したとの請求がなされたことを受け、平成24年9月から「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」(座長:産業医学振興財団 理事長 櫻井治彦)において業務との因果関係について検討し、本日、大阪府の印刷事業場に従事する労働者に発症した胆管がんの発症原因について、現時点での医学的知見を報告書としてとりまとめました。
  報告書のポイントは以下のとおりです。
  (1) 胆管がんは、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露することにより発症し得ると医学的に推定できること
  (2) 本件事業場で発生した胆管がんは、1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いこと



同報告書は、元来、事故調査報告書の性質を持たないため、発生状況に係る記述も一般的な方法によるものとはなっていない。
しかし、一部に、発生状況に言及された箇所もある。
以下は、同報告書の中で、発生状況に関係する部分を中心に抜粋したものです。




---------------「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」報告書から---------------
(略)

第3 本件事業場における胆管がん症例の特徴について

1 胆管がんの発症者数、性別、年齢

本件事業場の労働者で胆管がんを発症した者は16名であり、このうち7名が死亡している(平成24年12月末日時点)。なお、胆管がんを発症した者はいずれも男性であり、現時点では女性に胆管がんを発症した者はいない。
胆管がんを発症した16名の発症時の年齢は25歳〜45歳(平均年齢36歳)、胆管がんにより死亡した7名の死亡時の年齢は27〜46歳(平均年齢37歳)であり、日本国内の胆管がんによる死亡者の割合が極めて低い50歳未満での発生が特徴としてみられる。

2 臨床・病理所見

(1) 臨床診断を基に胆管がんを発症した者の発症部位をみると、「肝内胆管がん」が7名、「肝外胆管がん」が6名、「肝内・肝外胆管がん」が3名となっている。
(2) 以下(略)

3 従事業務

 本件事業場には、校正印刷部門のほか、営業、事務部門等に所属する者がおり、現在の社屋となった平成3年4月から平成24年12月までの間、180名が事業場に在籍していたが、胆管がんを発症した者はいずれも校正印刷部門所属の者で、営業、事務部門等の校正印刷部門以外に所属していた者(89名)に胆管がんを発症した者はいない。また、前記1のとおり、現時点では女性に胆管がんを発症した者はいないが、校正印刷部門に所属していた女性は少なく、また、在籍していた期間は男性と比べて非常に短かったものである。

4 胆管がんの罹患リスクからみた考察

(1) 本件事業場が平成3年4月に現社屋に移転した以降、平成24年12月までの間に70名の男性労働者が校正印刷部門に在籍していたが、このうち、16名が胆管がんを発症している。
 平成3年4月以降に校正印刷部門に在籍した男性労働者70名を観察集団とした胆管がんによる罹患リスクについて、厚生労働科学特別研究事業「印刷労働者にみられる胆管癌発症の疫学的解明と原因追及」研究班に対して算出を依頼したところ、日本人男性の平均罹患率の1,225.4倍(95%信頼区間700.2〜1,989.6)(別紙表1)となったことが判明し、これは極めて過剰な罹患リスクであることが認められる。
 このことは、本件事業場には、胆管がんの発症原因となる有害因子が存在したことが推定されるということであり、さらに、校正印刷部門の労働者のみに胆管がんが発症していることからみて、校正印刷業務において何らかの有害因子にばく露したことが発症原因として最も疑われるところである。

(2)  胆管がんを発症した16名全員がばく露した化学物質は、校正印刷業務で洗浄剤として多量に使用されていた1,2-ジクロロプロパンであることから、1,2-ジクロロプロパンと胆管がん発症との因果関係について検討することとする。
(3)  また、胆管がんを発症した16名中11名が1,2-ジクロロプロパンだけでなくジクロロメタンにもばく露していたこと、平成3年4月から平成8年3月までの間は、1,2-ジクロロプロパンと同程度の量のジクロロメタンが使用されていたことから、ジクロロメタンと胆管がん発症との因果関係について検討することとする。
(4) これらの物質以外に、平成3年4月以降、継続的に相当量使用していた洗浄剤として灯油があり、胆管がん発症者全員が使用していたことが確認されているが、灯油の常温での蒸気圧は低く揮発性が高いとはいえず、また、灯油は洗浄・払拭に使用された後、印刷機の下部に備えられた廃油受けに集められ、廃棄されていたことからみても、灯油へのばく露は小さかったと考えられることから、胆管がんの発症原因の検討対象からは除外した。
また、その他の化学物質についても、@使用量が少ないこと、A使用期間が短いこと、B使用開始時に既に複数の胆管がんの発症者が認められることなどが確認されたことから、胆管がんの発症原因の検討対象からは除外した。
(5) なお、1,2-ジクロロプロパン及びジクロロメタンの発がん性の検討に当たっては、1,2-ジクロロプロパンと比較して数多くの研究報告が認められるジクロロメタンから検討する。


第6 本件事業場におけるばく露濃度の推測について

 本件事業場において校正印刷業務に従事していた労働者に係るジクロロメタン又は1,2-ジクロロプロパンのばく露濃度については、独立行政法人労働安全衛生総合研究所が実施した模擬実験の結果、化学物質の使用量から推定される作業場の環境濃度及び洗浄作業を行っていた労働者のばく露がより高くなる傾向を踏まえれば、1,2-ジクロロプロパンについては、その使用期間(おおむね15年)を通して150ppmを超える高濃度であったと推測することが可能である。
 また、ジクロロメタンのばく露濃度については、特定の作業場所における環境濃度や洗浄作業時においては400ppmを超える高濃度であったものと推測することが可能であるが、その期間はおおむね3年であった。


第9 ばく露期間と発症までの潜伏期間について

2 本件事業場の症例

 本件事業場の16例の胆管がんの症例のうち、1,2-ジクロロプロパン単独ばく露が5症例、ジクロロメタン及び1,2-ジクロロプロパンの混合ばく露が11症例であり、ジクロロメタンの単独ばく露の症例はない。

(1) 1,2-ジクロロプロパンの単独ばく露
1,2-ジクロロプロパン単独のばく露者の5症例では、ばく露期間は3年8か月〜7年5か月(平均5年9か月)、ばく露から発症までの潜伏期間は7年5か月〜13年3か月(平均11年5か月)となっている。

(2) 1,2-ジクロロプロパンとジクロロメタンの混合ばく露
1,2-ジクロロプロパン及びジクロロメタンの混合ばく露者の11症例では、ばく露期間は4年11か月〜13年2か月(平均8年10か月)、ばく露から発症までの潜伏期間は5年7か月〜19年10か月(平均13年5か月)となっている。
なお、上記ばく露期間は、1,2-ジクロロプロパンとジクロロメタンの混合ばく露期間及び1,2-ジクロロプロパンの単独ばく露期間を通算したものである。


第10 結論

1 化学物質ばく露と胆管がん発症との因果関係

 胆管がんは、労働基準法施行規則別表第1の2の列挙疾病に掲げられておらず、また、過去にも胆管がんを業務上疾病として認定した事例はない。このため、本検討会は、本件事業場における胆管がん症例の特徴について検討を行うとともに、ジクロロメタン及び1,2-ジクロロプロパンを対象として発がんメカニズム等について検討を行った結果、現時点の医学的知見として、以下のとおり取りまとめ、胆管がんはジクロロメタン又は1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露することにより発症し得ると医学的に推定できるとの結論に達した。

@ 代謝経路と発がん性(略)
A 飽和濃度(略)
B 胆管がんの発症(略)
C ばく露期間(略)
D 潜伏期間(略)
E 危険因子(略)
F 病理所見(略)

2 本件事業場における胆管がんの発症原因

本件事業場で発生した胆管がんについては、発症状況、上記1の検討結果及び前記第6のばく露状況等を総合的に勘案すると、1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いと判断する。
また、ジクロロメタンについては、前記第7から、胆管がん発症に影響を及ぼした可能性が考えられるが、1,2-ジクロロプロパンとの混合ばく露であることによる影響の度合いは不明であること、また、前記第6から、高濃度ばく露が推測される期間が限定的であることから、発症原因として推定するには至らなかった。




---------------------------------------------------------
前記大阪の印刷工場の労働者16人については、2013.3.28労災の業務上災害が認定されている。
予防対策として、厚生労働省からは、次の通知および留意事項が出されているので、参照願いたい。


洗浄又は払拭の業務等における化学物質のばく露防止対策について
平成25年3月14日基発0314第1号 厚生労働省労働基準局長通知
→ http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002x6at-att/2r9852000002x70a.pdf

洗浄又は払拭の業務等における化学物質のばく露防止対策の周知に当たって留意すべき事項について
平成25年3月14日基安化発0314第1号 厚生労働省化学物質対策課長通知
→ http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T130326K0020.pdf






労務安全情報センター
http://labor.tank.jp
labor100-75.jpg




posted by labor at 09:52| Comment(1) | 個別災害事例

災害事例