2013年04月01日

1,2-ジクロロプロパン(別名 二塩化プロピレン)への長期間・高濃度ばく露による「胆管がん」の発症

1,2-ジクロロプロパン(別名 二塩化プロピレン)への長期間・高濃度ばく露による「胆管がん」の発症

印刷業〜校正印刷の業務に従事した労働者16人に胆管がんが発生
原因は、洗浄又は払拭の業務等において1,2-ジクロロプロパン(別名 二塩化プロピレン)に長期間・高濃度ばく露したことによるものと推定されている。



平成25年3月14日、「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」報告書が公表された。
(参考)同報告書の要点は、以下のとおりです。

 厚生労働省では、平成24年3月に、大阪府の印刷事業場で、化学物質の使用により胆管がんを発症したとの請求がなされたことを受け、平成24年9月から「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」(座長:産業医学振興財団 理事長 櫻井治彦)において業務との因果関係について検討し、本日、大阪府の印刷事業場に従事する労働者に発症した胆管がんの発症原因について、現時点での医学的知見を報告書としてとりまとめました。
  報告書のポイントは以下のとおりです。
  (1) 胆管がんは、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露することにより発症し得ると医学的に推定できること
  (2) 本件事業場で発生した胆管がんは、1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いこと



同報告書は、元来、事故調査報告書の性質を持たないため、発生状況に係る記述も一般的な方法によるものとはなっていない。
しかし、一部に、発生状況に言及された箇所もある。
以下は、同報告書の中で、発生状況に関係する部分を中心に抜粋したものです。




---------------「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」報告書から---------------
(略)

第3 本件事業場における胆管がん症例の特徴について

1 胆管がんの発症者数、性別、年齢

本件事業場の労働者で胆管がんを発症した者は16名であり、このうち7名が死亡している(平成24年12月末日時点)。なお、胆管がんを発症した者はいずれも男性であり、現時点では女性に胆管がんを発症した者はいない。
胆管がんを発症した16名の発症時の年齢は25歳〜45歳(平均年齢36歳)、胆管がんにより死亡した7名の死亡時の年齢は27〜46歳(平均年齢37歳)であり、日本国内の胆管がんによる死亡者の割合が極めて低い50歳未満での発生が特徴としてみられる。

2 臨床・病理所見

(1) 臨床診断を基に胆管がんを発症した者の発症部位をみると、「肝内胆管がん」が7名、「肝外胆管がん」が6名、「肝内・肝外胆管がん」が3名となっている。
(2) 以下(略)

3 従事業務

 本件事業場には、校正印刷部門のほか、営業、事務部門等に所属する者がおり、現在の社屋となった平成3年4月から平成24年12月までの間、180名が事業場に在籍していたが、胆管がんを発症した者はいずれも校正印刷部門所属の者で、営業、事務部門等の校正印刷部門以外に所属していた者(89名)に胆管がんを発症した者はいない。また、前記1のとおり、現時点では女性に胆管がんを発症した者はいないが、校正印刷部門に所属していた女性は少なく、また、在籍していた期間は男性と比べて非常に短かったものである。

4 胆管がんの罹患リスクからみた考察

(1) 本件事業場が平成3年4月に現社屋に移転した以降、平成24年12月までの間に70名の男性労働者が校正印刷部門に在籍していたが、このうち、16名が胆管がんを発症している。
 平成3年4月以降に校正印刷部門に在籍した男性労働者70名を観察集団とした胆管がんによる罹患リスクについて、厚生労働科学特別研究事業「印刷労働者にみられる胆管癌発症の疫学的解明と原因追及」研究班に対して算出を依頼したところ、日本人男性の平均罹患率の1,225.4倍(95%信頼区間700.2〜1,989.6)(別紙表1)となったことが判明し、これは極めて過剰な罹患リスクであることが認められる。
 このことは、本件事業場には、胆管がんの発症原因となる有害因子が存在したことが推定されるということであり、さらに、校正印刷部門の労働者のみに胆管がんが発症していることからみて、校正印刷業務において何らかの有害因子にばく露したことが発症原因として最も疑われるところである。

(2)  胆管がんを発症した16名全員がばく露した化学物質は、校正印刷業務で洗浄剤として多量に使用されていた1,2-ジクロロプロパンであることから、1,2-ジクロロプロパンと胆管がん発症との因果関係について検討することとする。
(3)  また、胆管がんを発症した16名中11名が1,2-ジクロロプロパンだけでなくジクロロメタンにもばく露していたこと、平成3年4月から平成8年3月までの間は、1,2-ジクロロプロパンと同程度の量のジクロロメタンが使用されていたことから、ジクロロメタンと胆管がん発症との因果関係について検討することとする。
(4) これらの物質以外に、平成3年4月以降、継続的に相当量使用していた洗浄剤として灯油があり、胆管がん発症者全員が使用していたことが確認されているが、灯油の常温での蒸気圧は低く揮発性が高いとはいえず、また、灯油は洗浄・払拭に使用された後、印刷機の下部に備えられた廃油受けに集められ、廃棄されていたことからみても、灯油へのばく露は小さかったと考えられることから、胆管がんの発症原因の検討対象からは除外した。
また、その他の化学物質についても、@使用量が少ないこと、A使用期間が短いこと、B使用開始時に既に複数の胆管がんの発症者が認められることなどが確認されたことから、胆管がんの発症原因の検討対象からは除外した。
(5) なお、1,2-ジクロロプロパン及びジクロロメタンの発がん性の検討に当たっては、1,2-ジクロロプロパンと比較して数多くの研究報告が認められるジクロロメタンから検討する。


第6 本件事業場におけるばく露濃度の推測について

 本件事業場において校正印刷業務に従事していた労働者に係るジクロロメタン又は1,2-ジクロロプロパンのばく露濃度については、独立行政法人労働安全衛生総合研究所が実施した模擬実験の結果、化学物質の使用量から推定される作業場の環境濃度及び洗浄作業を行っていた労働者のばく露がより高くなる傾向を踏まえれば、1,2-ジクロロプロパンについては、その使用期間(おおむね15年)を通して150ppmを超える高濃度であったと推測することが可能である。
 また、ジクロロメタンのばく露濃度については、特定の作業場所における環境濃度や洗浄作業時においては400ppmを超える高濃度であったものと推測することが可能であるが、その期間はおおむね3年であった。


第9 ばく露期間と発症までの潜伏期間について

2 本件事業場の症例

 本件事業場の16例の胆管がんの症例のうち、1,2-ジクロロプロパン単独ばく露が5症例、ジクロロメタン及び1,2-ジクロロプロパンの混合ばく露が11症例であり、ジクロロメタンの単独ばく露の症例はない。

(1) 1,2-ジクロロプロパンの単独ばく露
1,2-ジクロロプロパン単独のばく露者の5症例では、ばく露期間は3年8か月〜7年5か月(平均5年9か月)、ばく露から発症までの潜伏期間は7年5か月〜13年3か月(平均11年5か月)となっている。

(2) 1,2-ジクロロプロパンとジクロロメタンの混合ばく露
1,2-ジクロロプロパン及びジクロロメタンの混合ばく露者の11症例では、ばく露期間は4年11か月〜13年2か月(平均8年10か月)、ばく露から発症までの潜伏期間は5年7か月〜19年10か月(平均13年5か月)となっている。
なお、上記ばく露期間は、1,2-ジクロロプロパンとジクロロメタンの混合ばく露期間及び1,2-ジクロロプロパンの単独ばく露期間を通算したものである。


第10 結論

1 化学物質ばく露と胆管がん発症との因果関係

 胆管がんは、労働基準法施行規則別表第1の2の列挙疾病に掲げられておらず、また、過去にも胆管がんを業務上疾病として認定した事例はない。このため、本検討会は、本件事業場における胆管がん症例の特徴について検討を行うとともに、ジクロロメタン及び1,2-ジクロロプロパンを対象として発がんメカニズム等について検討を行った結果、現時点の医学的知見として、以下のとおり取りまとめ、胆管がんはジクロロメタン又は1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露することにより発症し得ると医学的に推定できるとの結論に達した。

@ 代謝経路と発がん性(略)
A 飽和濃度(略)
B 胆管がんの発症(略)
C ばく露期間(略)
D 潜伏期間(略)
E 危険因子(略)
F 病理所見(略)

2 本件事業場における胆管がんの発症原因

本件事業場で発生した胆管がんについては、発症状況、上記1の検討結果及び前記第6のばく露状況等を総合的に勘案すると、1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いと判断する。
また、ジクロロメタンについては、前記第7から、胆管がん発症に影響を及ぼした可能性が考えられるが、1,2-ジクロロプロパンとの混合ばく露であることによる影響の度合いは不明であること、また、前記第6から、高濃度ばく露が推測される期間が限定的であることから、発症原因として推定するには至らなかった。




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前記大阪の印刷工場の労働者16人については、2013.3.28労災の業務上災害が認定されている。
予防対策として、厚生労働省からは、次の通知および留意事項が出されているので、参照願いたい。


洗浄又は払拭の業務等における化学物質のばく露防止対策について
平成25年3月14日基発0314第1号 厚生労働省労働基準局長通知
→ http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002x6at-att/2r9852000002x70a.pdf

洗浄又は払拭の業務等における化学物質のばく露防止対策の周知に当たって留意すべき事項について
平成25年3月14日基安化発0314第1号 厚生労働省化学物質対策課長通知
→ http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T130326K0020.pdf






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2013年03月31日

飲食店における「切れ、こすれ」災害の特徴と対策について

以下は厚生労働省労働基準局安全衛生部による
飲食店における「切れ、こすれ」災害の分析結果

飲食店の切れこすれ災害24-9.JPG
 ↑ 表は、飲食店における平成24年9月末時点における速報の労働災害


飲食店における「切れ、こすれ」災害の分析結果


1) 刃物による災害

○ 包丁等、食材加工用の刃物による「切れ、こすれ」災害は全体の約4割。
○ そのうち、材料の仕込み等の作業中に誤って手などを切った災害は約9割とほとんどを占めており、作業中によそ見をしたために被災したものも見られた。
○ 残りは包丁を研ぐ、拭く、といった作業中の災害などであるが、別の作業をしている時、片付けずに放置していた包丁に触れてしまった災害など、4S(整理、整頓、清掃、清潔)が徹底されていれば防止できたと考えられるものも見られた。


 対策

 ア 刃物を取り扱っている際には細心の注意を払うこと。特に、よそ見等、作業中に刃物から目線を外すようなことはしないこと。

 イ 4S(整理、整頓、清掃、清潔)を徹底すること(刃物も含め、使い終わった用具は所定の保管位置に戻し、作業場所に放置したままにしない)。




2) 割れた食器による災害

○ 割れた食器等(皿、グラス、ジョッキ等)による災害は全体の約3割5分。
○ そのうち、食器等の洗浄、あるいは洗浄後の拭きとり中に食器等が割れて手などを切った災害が約7割を占めている。
○ その他には、割れた食器等がシンクに混入していたことに気づかないまま洗浄作業を行って手などを切った事例のほか、床に落ちて割れた食器を片付ける際に破片を直接手で拾って切った事例などが見られた。


 対策

 ア 食器を洗浄する場合には、手先を保護するためゴム手袋等を使用することが望ましいこと。

 イ 割れた食器等を片付ける際には、ほうきやちり取りを使用する等により、直接手で破片を触るような作業方法は避けること。




3) 缶の鋭利部分による災害

○ 缶の蓋など缶の鋭利部分で切った災害は全体の約1割。
○ そのうち、缶を開けた際に手などを切った災害は4分の3を占める。缶切りを使って開けた缶の蓋のほか、プルトップで開ける缶の蓋で切った事例も多い。
○ 残りは、缶に廃油を入れてこれを廃棄する際に誤って切った事例などであるが、空き缶を踏みつぶして容積を小さくする、といった安全確保の観点から適切とは言えない作業により被災した事例も見られた。


 対策

 ア 缶を開ける時には、缶の種類(缶切りを使用して開けるもの、プルトップで缶上部を開けるもの)に関わらず、缶開口部の縁、蓋の縁が鋭利部分となるため、不注意による切傷のリスクがあることに留意すること




4) 食品加工用機械による災害

○ 食品加工用機械による災害は全体の約1割弱で、食材の加工中の災害のほか、詰まりの除去等機械の掃除中の災害などが見られた。
○ この中には、機械を稼働させたまま詰まりを取ろうとして被災した事例や、機械のガードを外したまま作業を行って被災した事例など、不適切な作業による災害が4割近く発生している。


 対策

 ア 機械の点検、修理、掃除をする時には、機械を確実に止めたことを確認してから作業を行うこと。

 イ 刃物部分のガードを外す等、安全確保の観点から不適切と思われる方法での使用はしないこと




5) その他

○ 上記のほか、中に焼き鳥串や割れた食器など鋭利物が混入しているゴミ袋を廃棄しようとして持った際に当該鋭利物によって被災した事例などが見られた。


 対策

 ア ゴミの廃棄等作業について、焼き鳥串や割れた食器等が混入している可能性もあることに留意し、ゴミ袋の運搬、廃棄に当たっては軍手やエプロン等を使用することが望ましいこと。

 イ 現在行っている作業についてのリスクアセスメントを実施すること。特に、機械を使用する作業について、使用する機械等のリスクアセスメントを実施し、その作業におけるリスクを特定し災害防止対策を講じること





(参考)
以上の災害分析の結果は、以下の通知されている。

厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長から都道府県労働局労働基準部長あて「パン、菓子製造業における労働災害防止対策の徹底について」(平成24年11月22日基安安発1122第3号)



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パン、菓子製造業における労働災害の特徴と対策について

以下は厚生労働省労働基準局安全衛生部による
パン・菓子製造業における労働災害の分析結果

パン菓子製造業の災害H24-9.JPG

 ↑ 表は、食料品製造業のうち、パン、菓子製造業の平成24年9月末時点における労働災害

1) 「はさまれ、巻き込まれ」による災害

 全体の約9割を占めている。
 作業別にみると、次のような「非定常作業」における災害が全体の約8割を占める。
 1) 機械の清掃作業中の災害が約3割、
 2) 機械に付着した生地や包装紙等を除去する作業中の災害が3割弱
 3) 機械の修理・調整中の災害が約2割
 災害の要因としては、
 ○ 機械を止めないまま点検、修理、清掃等を行って被災した災害が約6割を占めている。
 ○ その他、機械の誤操作により被災した災害、機械のガードがない状態(ガードを外した状態を含む)で作業を行って被災した災害がそれぞれ約1割みられた。
 ○ 機械以外の「はさまれ、巻き込まれ」災害は全体の約1割であるが、そのほとんどは荷の運搬に際しての災害(人力運搬機(台車、ハンドパレットなど)にはさまれる等)であった。
 

 対策

  ア 機械の点検、掃除、修理等、非定常作業を行う場合には、機械を止め、確実に停止したことを確認してから作業を行うこと。

  イ 機械に生地や包装紙等が付着したような場合に、これを除去する作業(以下「除去等作業」という。)は、通常の作業中に発生するケースもあり、特にそういうケースにおいては機械を止めずに作業を行ってしまいがちである。しかしながら、本来、除去等作業は機械を止めてから行うべき作業であるため、機械を止め、確実に停止したことを確認してから作業を行うこと。


2) 「転倒」による災害

 1) 全体の約4割が床や地面で滑って転倒した災害、
 2) 障害物によりつまずいた災害が全体の約3割弱となっている。
 滑って転倒した災害の原因として、約半数が床や地面が濡れていたことによるもの、2割弱が床や地面が凍結していたことによるものとなっている。
 床の濡れや、床に置いた障害物などによる災害について、災害の概要を確認したところ、少なくとも約3割は4S(整理、整頓、清掃、清潔)を徹底していれば防止できたものと考えられる。


 対策

 4S(整理、整頓、清掃、清潔)の徹底により、床面の濡れや通路に置いた荷物等、転倒災害につながるリスクを極力排除・低減すること。




(3) 「高温・低温の物との接触」による災害

 1) 熱湯により被災した災害が全体の約4割5分。
 2) 熱湯以外では、熱した材料により被災した災害が全体の約1割弱となっているほか、蒸気により被災したもの、冷凍庫における作業中の凍傷などもみられた。

 作業内容でみると、清掃、消毒、材料の湯せんなどにおける災害が多数を占めている。また、それほど数は多くないが、材料内に器具等を落としてしまい、これを拾おうとして被災したものもみられた。これらの災害において、耐熱手袋や長靴、長いエプロンなどを着用していれば防止できたと考えられるものは全体の約2割弱であった。

 対策

 ア 作業に当たっては十分な耐熱性能を有する手袋、長靴、エプロン等、身体を保護できるものを着用することが望ましいこと。

 イ 熱した原材料、生地等を直接触れるような行為は避けること。


 

(参考)
以上の災害分析の結果は、以下の通知されている。

厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長から都道府県労働局労働基準部長あて「パン、菓子製造業における労働災害防止対策の徹底について」(平成24年11月22日基安安発1122第5号)



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