2013年03月31日

塩酸貯蔵タンクの移設作業中にタンク内に労働者2名が転落し死亡

災害の概要

1 発生日時  平成23年8月24日(水)午前9時30分頃

2 発生場所  千葉県船橋市

3 被災状況  死亡2名

4 発生状況の概要

  災害発生事業場では、鋼板の錆を落とすための洗浄液として使用する塩酸の貯蔵タンクを屋外に設置しており、そのうちの2基のタンク(地上5mの架空タンク、横置型)を地上に移設する工事を行っていた。

  当該工事において、2基のタンクと別の塩酸タンクX(縦置型。高さ約3.4m、直径2.0m。FRP製)とを接続する配管を撤去するにあたり、当該配管をどの位置で切断できるか確認しておくよう、元方事業者の作業責任者が下請事業者の労働者Aに指示した。

  労働者Aは同タンク附属のはしごを使用してタンク上部に昇り、配管接続部へ移動しようとしたところ、タンク上部が割れ、タンク内に墜落した。
  同僚の労働者Bがこれを救助しようと塩酸タンクXの上部に乗ったところ労働者Bも墜落した。他の労働者が救助を要請するとともにタンクから塩酸を抜く等により2時間半後に救出したが、2名とも死亡していたもの。

 塩酸タンクX内にあった塩酸は濃度35%、深さ約2mであった。

(注)上記の災害概要等については現在調査中であり、確定したものではない。


(参考)
過去の同種災害の例

発生年月 平成14年4月
発生場所 東京都北区
被災状況 死亡1名、薬傷5名

災害発生状況
 塩酸タンク(高さ3.2m、直径2m、FRP製)の更新作業において、塩酸の引抜きのため上部開口部に耐酸ローリーのホースを設置する準備で、開口部ねじを開けようとして昇り、梯子がぐらついたため 、タンク上部に移った時、被災者自身の体重でFRPが破損し、落下した。タンク内部には1,050Lの35%塩酸が入っており、全身化学熱傷で死亡した。また、転落した被災者を救助しようとタンクから運び出し、全身に塩酸を浴びた被災者の体を支えた者も、作業服の上から塩酸がしみ込むなどして薬傷を負った。



発生年月 平成18年5月
発生場所 宮崎県延岡市
被災状況 死亡1名

災害発生状況
 排水中和設備タンクヤードに設置された塩酸タンク等の周辺に仮設した足場上で当日の電線管敷設工事を終了したので、足場上から降りる際、近くの塩酸タンクに附属の梯子があるのに気付き、そこから降りようとして足場からタンクの手すりにのぼり、FRP製の塩酸タンクの頂部に乗り移った際、タンク頂部が破損し、タンク内部に落下し、35%塩酸により薬傷した。(被災者死亡のため推定)



発生年月 平成18年8月
発生場所 愛媛県伊予市
被災状況 死亡1名

災害発生状況
 工場の操業停止に伴い、FRP製タンク(高さ約3m、直径約2.5m)に上がり、塩酸を除去する作業のため、天板状のマンホールのボルトの抜き取り作業中に、タンク上部の一部(天板)が抜け転落。タンクのなかに残っていた塩酸(35%。深さ約1m)で全身やけどとなり死亡したもの。




[再発防止対策]

 厚生労働省は、平成24年1月11日付けで厚生労働省労働基準局安全衛生部長から都道府県労働局長あて「平24.1.11付け基安発0111第2号」「塩酸等貯蔵タンクの保守点検・改修工事における労働災害防止対策の徹底について」をもって、上記の災害発生状況(あわせて同種災害の例)を明らかにするとともに、本件災害の再発防止対策を徹底を通知した。
(関係事業者団体への要請もあわせ実施。)


本災害の特徴等

○ 特定化学物質である塩酸を製造し、又は取り扱う設備であって移動式以外の物は特定化学設備に該当するが、特定化学設備の改造、修理等の作業は、小規模であるもの等一部の場合を除き、当該特定化学設備を所有等し、その管理権限を有する事業者が他の事業者に発注して行われることが多く、本件災害もこれに当たるものである。

対策

○ 発注者である特定化学設備を所有等し、その管理権限を有する事業者及び改造、修理等の作業を受注して実際に当該作業を管理監督する事業者それぞれが果たすべき役割等について下記のとおりとりまとめた。


                        記


1 塩酸等金属腐食性の液体の貯蔵に主に使われている強化プラスチック(FRP)製のタンクは耐腐食性に優れているものの、長期にわたり塩化水素等の腐食性のガスにさらされること及び屋外におかれている場合には紫外線にさらされること等から、経年劣化によりプラスチックとガラス繊維の剥離等により強度が低下することについて、当該タンクの管理権限を有する事業者が十分に認識し、タンクのメーカーから適正な検査方法についての必要な情報を入手するなどして、必要な点検、作業者への教育、請負人への情報提供等の実施を徹底すること。


2 経年劣化によりFRPの強度が低下することから、元方事業者及び請負人は、労働者等がFRP製タンクの天板等に乗ることのないよう、高所作業においては、適切な足場(作業床)を設置しなければ作業を行ってはならないことを徹底すること。


3 設備の保守点検・改修作業等を発注する者(以下「発注者」という。)は、作業に伴う危険性に係る情報をあらかじめ元方事業者に提供するとともに、当該危険性を踏まえた適切な作業が行われるよう指導すること。


4 発注者は、元方事業者が統括管理体制を確立し、各請負人の作業分担を明確化するよう指導すること。特に、各請負人が行う作業間の連絡調整等必要な措置を確実に実施させ、それぞれの作業で有害物による危険が生じない措置を元方事業者に講じさせること。


5 塩酸等を貯蔵する特定化学設備を所有等し、その管理権限を有する事業者は、法定の定期自主検査を確実に実施するとともに、定期に点検を行うことにより、設備の経年劣化を早期に発見するよう努めること。


6 作業中に予定されていない作業の必要が認められた際に、当該作業を行う請負人の判断に任せることなく、元方事業者との間において作業方法の検討を行う等の対応を予め取り決めておくこと。


7 関係事業者は災害発生時等異常な事態が発生した場合の救護体制の確立、訓練を行うこと。
 特に、二次災害の防止の観点を含め教育・指導を行うこと。



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2012年11月18日

学童保育の事故-「集団遊び・球技中に転倒、遊具から転落などが多い」

 厚生労働省は、学童保育(全国2万1,000、児童85万人が利用)中の事故が2011年10月1日から2012年9月30日の1年間で227件(死亡1含む)発生したと発表。

 調査対象の事故は、「学童保育中の死亡事故や治療期間30日以上の負傷・疾病を伴う事故」。本年は33都道府県で事故が発生した。

 骨折が182件で80.2%を占め、次いで打撲・ねんざの23件となっている。
 死亡は1件、学童保育に向かう途中の交通事故だった。負傷児童の学年は、1年生が87人と多い。
 負傷事故の原因は集団遊び中の転倒が61件を占め、遊具からの転落が54件、球技中の転倒が43件。

 (以上、マスコミ報道等を要約した。)


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2012年11月06日

八箇峠トンネル事故調査・検討委員会説明資料に見る原因の推定

 八箇峠トンネル事故に関する調査・検討委員会は、平成24.10.13第2回検討会を持った。
 今後も事故の原因調査等が継続されるなかで、新たな背景・原因が特定されていくことも十分考えられるが、前記第2回検討会への提出「説明資料」(国土交通省)のなかで、今回事故の背景・原因と考えられることに触れた箇所がある。

 現時点での情報として、以下、拾い出しをしてみた。

(情報元資料)
 国土交通省北陸地方整備局(平成24.10.13)説明資料
 → http://www.hrr.mlit.go.jp/saigai/h240524/chousaiinkai2/setumei.pdf


(以下はその抜粋)


4.八箇峠トンネルでの爆発原因の類推(ガス発生源及び滞留の類推)

4.1 地震・豪雨等の状況

 地下水位や湧水量には、地震や豪雨災害等の影響による変動は見られず、ガス発生を誘因する事象は確認できない。

4.2 長期休工期間の状況

・当該地域では、毎年12月〜4月末までの約4.5ヵ月は4mにも及ぶ積雪があり雪崩も発生する。工事用道路を使って工事現場への進入は困難なため、冬期間は休工せざるを得ない。また、この期間は、工事用電源を確保できないため、坑内の換気を行うことができない。

・平成23年7月28日に発生した「新潟・福島豪雨」により商用電源の供給が絶たれた後、平成23年10月10日〜15日の日中において、坑内資機材の撤去作業のため発動発電機を用いてコントラファンを稼働させて排気換気を行った。

・その後、平成24年5月17日までの約7ヵ月の長期休工となった。この間、トンネル内の換気はできない状況であった。



5.八箇峠トンネル施工上の課題抽出

5.1 越冬対策

 冬期休工期間中は電源が確保できないことから、長期間送風換気を行わないと坑内に可燃性ガスが蓄積されるおそれがあるため、以下に示す越冬対策および越冬後の換気対策を行うこととする。

@ 縦ボーリングによる自然換気を実施する。

A 工事休止期間中も坑内に帯電防止風管(φ1600、2系列)を存置する。

B 坑内8箇所に定置式計測器を存置する。

C 切羽天端部まで3インチの給水管を延伸し、吸気管路を確保する。

5.2 工事再開に向けた課題と配慮事項(案)

@ 越冬後の入坑前手順

・定置式計測器及び切羽天端部まで敷設した吸気管より坑内の空気を採取し、可燃性ガス濃度の測定を行う。

・坑内ガス濃度を確認した後に、坑内換気(送気方式)を行う。

・坑内の可燃性ガス及び酸素濃度の安全性を確認した後に、ガス測定員による計測を実施しながら入坑する。


(参考)(なお新聞発表等の資料一覧が下記に掲載されている)
八箇峠トンネルにおける工事事故関連 記者発表資料
→ http://www.hrr.mlit.go.jp/saigai/h240524/index.html





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